ズツノート presents ・ 頭痛外来ガイド
気圧と頭痛の関係(なぜ起きる・何hPaが目安・対策)
最終更新 2026年10月10日
「雨の前になると頭が痛い」という方へ。気圧で頭痛が起きる仕組み、研究で分かっている目安の数字、下がる日にできること、気圧のせいかどうかを確かめる方法を、頭痛専門医がまとめました。
「雨の前になると頭が痛い」「台風が近づくと決まって寝込む」。頭痛外来では、こうした訴えを毎日のように聞きます。気圧の変化をきっかけに頭痛が出る人は確かにいます。海外の調査では、片頭痛のある人の約半数が「天気が引き金になる」と感じていました。この記事では、なぜ気圧で頭痛が起きるのか、何hPaくらいが目安なのか、下がる日にできることを、頭痛専門医がまとめます。
なぜ気圧が下がると頭痛が起きるのか
はっきりした仕組みは、まだ分かっていません。有力な説明は「耳の奥(内耳)が気圧の変化を感じ取り、自律神経が反応する」というものです。内耳には体のバランスを取る器官があり、ここが気圧の変化を感じると、交感神経が働いて血管や神経の状態が変わり、頭痛が起きやすくなると考えられています。動物実験ではこの流れを支持する結果が出ていますが、人での証明はこれからです。
もう一つ大事なのは、気圧が下がる日は、ほかの引き金も一緒に来ることです。低気圧や前線が近づくと、気温が急に変わり、湿度が上がり、天気が崩れて外出や睡眠のリズムが乱れます。片頭痛は「引き金が重なったとき」に出やすい頭痛なので、気圧だけでなく、こうした変化の重なりが発作を起こしていることも多いです。
何hPa下がると頭痛が出るのか
海面での平均の気圧は約1013hPaです。台風のような20〜30hPaの大きな低下だけが問題だと思われがちですが、日本の研究では、もっと小さな低下でも片頭痛の発作が増えていました。2つの研究(2011年・2015年)は、どちらも平均より6〜10hPaほど低いとき、つまり1003〜1007hPa前後で発作が増えたと報告しています。いずれも人数の少ない研究なので「この数字を下回ると必ず」とは言えませんが、「ふだんより少し低い」程度でも体は反応する、と考えておくのが実際的です。
ズツノートの全国の気圧予報では、この研究の数字に合わせて、次の2つの見方で「注意・やや注意・安定」の目安を出しています。
| 見方 | やや注意 | 注意 |
|---|---|---|
| その日の最低気圧(低さ) | 1007hPa未満 | 1003hPa未満 |
| 6時間以内の下げ幅(変化) | 3hPa以上 | 6hPa以上 |
数字そのものより「下げ幅」のほうに体が反応する人も多いです。自分が「低さ」に弱いのか「下がる速さ」に弱いのかは人によって違うので、後で説明する記録で確かめるのが確実です。
気圧で出る頭痛は、どんな頭痛か
いちばん多いのは片頭痛です。ズキズキと脈打つ痛み、動くとつらい、吐き気、光や音がつらい、といった特徴があります。頭全体が締めつけられるような緊張型頭痛が天気で悪化する人もいます。
「気象病」「天気痛」という言葉をよく見かけますが、これは正式な病名ではなく、天気の変化で症状が出る状態を指す呼び名です。頭痛の場合、その中身は片頭痛や緊張型頭痛であることがほとんどです。つまり対策の中心は「天気そのもの」ではなく「自分の頭痛のタイプに合った治療」になります。頭痛のほかに、めまい・耳のつまり・だるさ・眠気が気圧で出る人もいます。
気圧が下がる日にできること
1. 前もって知る
下がる日が分かっていれば、予定や睡眠を調整できます。全国の気圧予報は都道府県ごとに今日・明日・明後日の気圧の推移と目安を1日3回更新しています。ズツノートのアプリでは、現在地(または登録した郵便番号)の気圧が急に下がりそうなときだけ、最長12時間前にプッシュ通知でお知らせします(下がる日に毎回届くものではありません)。
2. 引き金を重ねない
- 睡眠と食事の時間を崩さない。寝不足・寝すぎ・空腹は、気圧と並ぶ代表的な引き金です
- 水分をこまめにとる。脱水も発作を起こしやすくします
- 光と画面を控えめに。天気が崩れる日は室内で画面を見る時間が増えがちです。片頭痛のある人は光で悪化しやすいので、画面を暗めにする、休憩を入れる
- 首や肩を冷やさない。気温が下がる日は、首元を温めるだけで楽になる人もいます
3. 薬は「飲み方」を主治医と決めておく
片頭痛の薬は、痛み始めの早い時期に飲むのが基本です。「下がりそうだから」と前もって飲むべきかどうかは薬の種類によって違うので、自己判断せず主治医に相談してください。市販薬・処方薬を問わず、頭痛薬を月に10日以上飲む状態が続くと、薬の飲みすぎ自体が頭痛の原因になることがあります。天気の悪い月に薬が増えていると感じたら、早めに相談を。
漢方薬の五苓散が「気圧の頭痛」に使われることがあります。効くかどうかを調べた研究はまだ少なく、合う人と合わない人がいます。試したいときは主治医や薬剤師に相談してください。
4. グッズは「自分に合うか」で選ぶ
気圧調整の耳栓、耳のまわりのマッサージ、冷やす・温めるグッズなど、天気が崩れる日に使う人が多い道具があります。効き方に個人差が大きく、研究で効果が確かめられたものは多くありません。ズツノートの利用者調査では、頭痛のある人が実際に何を使っているかを部門別に公開しています。
自分の頭痛が気圧と関係しているか、確かめる方法
「気圧のせいだと思う」と「気圧のせいだった」は別です。確かめ方は一つで、頭痛があった日と、その日の気圧を並べて記録することです。1〜2か月分あれば、下がった日に本当に出ているのか、低い日なのか下がる日なのか、気圧より寝不足や月経のほうが関係しているのか、が見えてきます。
この記録は、主治医にとっても大切な材料です。「天気で悪化する片頭痛」と分かれば、予防薬を含めた治療の相談がしやすくなります。ズツノートは、記録した日の気圧・気温・湿度を自動で保存し、頭痛の記録と同じグラフで見返せます。
頭痛日誌アプリ「ズツノート」
頭痛を記録すると、その日の気圧・気温・湿度が自動で残ります。気圧と頭痛の関係が1〜2か月でグラフになり、主治医にそのまま共有できます。
受診したほうがよい目安
- 天気に関係なく、頭痛が月に何度もある
- 頭痛薬を月に10日以上飲んでいる
- 学校や仕事を休む・早退するほどの頭痛が月に1回以上ある
- いつもと違う頭痛、急に始まった強い頭痛、発熱・手足のしびれ・ろれつの回りにくさを伴う頭痛(この場合はすぐに受診を)
片頭痛には、発作を減らす予防薬や、早く効く急性期の薬があり、「天気に左右されない毎日」に近づけることができます。受診の目安は頭痛外来を受診する目安、記録の付け方は頭痛ダイアリーの書き方にまとめています。
参考にした研究
- Prince PB, et al. The effect of weather on headache. Headache. 2004;44:596-602.
- Kimoto K, et al. Influence of barometric pressure in patients with migraine headache. Internal Medicine. 2011;50:1923-1928.
- Okuma H, et al. Examination of fluctuations in atmospheric pressure related to migraine. SpringerPlus. 2015;4:790.
- Hoffmann J, et al. Weather sensitivity in migraineurs. Journal of Neurology. 2011;258:596-602.
よくある質問
気圧が何hPa下がると頭痛が出ますか?
日本の2つの研究では、海面の平均(約1013hPa)より6〜10hPaほど低い、1003〜1007hPa前後で片頭痛の発作が増えていました。台風のような大きな低下だけでなく、小さな低下でも出ます。ズツノートの気圧予報では、最低気圧が1007hPa未満で「やや注意」、1003hPa未満で「注意」、6時間で3hPa以上・6hPa以上の下げ幅も同じ目安にしています。ただし個人差が大きいので、自分の頭痛と気圧を並べて記録して確かめるのが確実です。
低気圧で頭痛が起きるのはなぜですか?
はっきりした仕組みは分かっていませんが、耳の奥(内耳)が気圧の変化を感じ取り、自律神経(交感神経)が反応して血管や神経の状態が変わる、という説明が有力です。また、気圧が下がる日は気温の変化・湿度の上昇・睡眠や外出のリズムの乱れなど、ほかの引き金も重なりやすく、その重なりで片頭痛が起きていることも多いです。
気圧で出る頭痛は片頭痛ですか?「気象病」「天気痛」とは違いますか?
気圧で悪化する頭痛の多くは片頭痛で、緊張型頭痛が悪化する人もいます。「気象病」「天気痛」は正式な病名ではなく、天気の変化で症状が出る状態を指す呼び名です。頭痛の場合、その中身は片頭痛や緊張型頭痛であることがほとんどなので、対策の中心は自分の頭痛のタイプに合った治療になります。
気圧が下がる日に頭痛を防ぐ方法はありますか?
気圧の予報で下がる日を前もって知り、睡眠と食事の時間を崩さない、水分をこまめにとる、光や画面を控えめにする、首や肩を冷やさない、など引き金を重ねないことが基本です。片頭痛の薬は痛み始めの早い時期に飲むのが原則で、前もって飲むかどうかは薬の種類によるため主治医に相談してください。頭痛薬を月に10日以上飲む状態が続くと薬の飲みすぎ自体が頭痛の原因になるので、早めの相談を。
気圧が上がるときも頭痛は出ますか?
出る人もいます。研究で主に調べられているのは気圧が下がるときですが、上がるときや、変化の速さに反応する人もいます。自分がどのパターンで出るのかは、頭痛の記録とその日の気圧を1〜2か月並べると見えてきます。
頭痛薬は気圧が下がる前に飲んでおいたほうがいいですか?
自己判断で前もって飲むことはおすすめしません。片頭痛の薬の多くは痛み始めに飲んで効くもので、薬の種類によって考え方が違います。天気で発作が増える方には予防薬という選択肢もあります。飲み方は主治医と相談して決めてください。
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執筆・監修者
脳神経内科専門医・頭痛専門医。東京大学 脳神経内科で診療・研究に従事したのち、頭痛診療に専念。頭痛診療に欠かせない頭痛日誌が、いまだに紙での運用が多く、市販のアプリも使いにくいものばかりであることに課題を感じ、自ら頭痛日誌アプリ『ズツノート』を開発した。エンジニアとしても活動する“つくる頭痛専門医”として、診療と開発の両面から頭痛医療に取り組んでいる。
現在の所属:埼玉精神神経センター 頭痛専門外来 / 荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長
開発した頭痛日誌アプリ「ズツノート」を見る頭痛は「我慢するもの」ではなく「付き合い方を整えるもの」です。自分に合った頭痛外来を見つけることが、その大切な第一歩になります。
