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片頭痛の予防治療(対象・予防薬の種類・続け方)

最終更新 2026年10月19日

「頭痛が多いけれど、毎回薬で止めるしかない?」という方へ。片頭痛の発作を減らす予防治療の対象の目安、予防薬の種類、効いているかの確かめ方を、頭痛専門医がまとめました。

前川 裕貴 - 頭痛専門医

この記事の監修・執筆

前川 裕貴

脳神経内科専門医・頭痛専門医

頭痛日誌アプリ「ズツノート」開発者

日本頭痛学会 専門医日本神経学会 専門医日本内科学会 内科専門医難病指定医

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片頭痛(偏頭痛)の予防治療は、発作が起きてから止めるのとは別に、毎日の飲み薬や月1回などの注射を続けて、発作の回数を減らし、起きても軽く済むようにする治療です。頭痛の診療ガイドライン2021では、片頭痛の発作が月に2回以上、または生活に支障をきたす頭痛が月に3日以上ある人は、予防治療を検討することが勧められています。この記事では、どんな人が対象になるのか、予防薬にはどんな種類があるのか、効いているかをどう確かめるのかを、頭痛専門医がまとめます。

片頭痛の予防治療とは?

予防治療は、発作のたびに薬で対処するのを続けるのではなく、発作が起きにくい状態に体を整えていく治療です。予防薬を飲んでいても発作がゼロになるとは限らないので、発作のときの薬(急性期治療薬)も引き続き使います。

予防薬が効くと、頭痛の日数が減るだけでなく、発作のときの薬を飲む日も減ります。発作の薬を飲む日が多いと、それ自体が頭痛を増やす「薬の飲みすぎによる頭痛」につながるため、予防治療はその予防にも役立ちます。発作のときの薬の種類は片頭痛の薬の種類と飲み方で説明しています。

予防治療は、頭痛が月に何日あったら考える?

目安は、片頭痛の発作が月に2回以上、または生活に支障をきたす頭痛が月に3日以上です(頭痛の診療ガイドライン2021)。日数のほかに、次のような場合も予防治療を考えるきっかけになります。

  1. 発作の薬が効きにくい、副作用や持病のために使えない
  2. 発作の薬を飲む日が増えてきて、飲みすぎが心配
  3. 回数は多くなくても、1回の発作で寝込む、仕事や学校を休むなど生活への支障が大きい
  4. 前兆が長く続くなど、特殊なタイプの片頭痛

予防治療を始めるかどうかは、頭痛の日数、生活への支障、ほかの病気や妊娠の予定、毎日薬を飲むことへの考え方などをふまえて、主治医と相談して決めます。ガイドラインの目安は「検討する」ためのもので、当てはまれば必ず始めるというものではありません。

予防薬には、どんな種類がある?

日本で片頭痛の予防に使われる薬は、昔から使われている飲み薬、CGRPに働く注射薬(抗体薬)、CGRPに働く飲み薬(ゲパント)の3つのグループに分けられます。

種類主な薬(一般名と主な製品名)使い方
従来の飲み薬ロメリジン(ミグシス)、バルプロ酸(デパケン、セレニカ)、プロプラノロール(インデラル)、アミトリプチリン(トリプタノール)など毎日飲む。3割負担で月数百円〜千円ほど
CGRP関連抗体薬(注射)ガルカネズマブ(エムガルティ)、フレマネズマブ(アジョビ)、エレヌマブ(アイモビーグ)皮下注射。エムガルティは30日ごと(初回のみ2本)、アジョビとアイモビーグは4週ごと。アジョビは3本まとめて12週ごとにもできる
CGRP関連抗体薬(点滴)エプチネズマブ(ビエプチ)12週(3か月)ごとに約30分の点滴。2026年9月16日に承認され、薬価が決まって発売されるのはこれから
ゲパント(飲み薬)アトゲパント(アクイプタ)、リメゲパント(ナルティーク)アクイプタは毎日1回、ナルティークは1日おきに1回飲む

従来の飲み薬

ロメリジンは日本で片頭痛の予防のために使われてきた薬です。バルプロ酸はてんかん、プロプラノロールは高血圧の薬として使われていたもので、片頭痛の予防にも効くことが分かり、日本でも片頭痛の予防の効能が認められています。アミトリプチリンはうつ病の薬で、片頭痛の効能は添付文書にありませんが、ガイドラインで予防効果が認められ、片頭痛や緊張型頭痛の予防に広く使われています。このほかにも主治医の判断で使われる薬があります。

少ない量から始めて、効き目と副作用を見ながら調整することが多く、効果が分かるまでに数週間から2〜3か月かかります。副作用は薬ごとに違い、バルプロ酸では眠気・体重の増加・髪が抜ける、アミトリプチリンでは眠気・口の渇き・便秘などが出ることがあります。プロプラノロールは、ぜんそくのある人には使えません(禁忌)。

バルプロ酸は、おなかの赤ちゃんの奇形などの危険を高めるため、妊娠中の人には片頭痛の予防として使えません(禁忌)。妊娠の可能性がある人、これから妊娠を考えている人も、使い始める前と使っている間に、主治医と必ず相談してください。自己判断で急にやめることもしないでください。

費用は、3割負担で月数百円〜千円ほどのことが多く、CGRP関連の薬よりずっと抑えられます。後で触れるように、抗体薬は従来の飲み薬を試したあとに使う決まりがあるため、まずこのグループから始めるのが一般的です。

CGRP関連抗体薬(注射・点滴)

CGRPは、片頭痛の痛みに深く関わる物質です。抗体薬はこのCGRP、またはその受け皿に結びついて働きを抑える薬で、片頭痛の予防のために作られました。ガルカネズマブ(エムガルティ)とフレマネズマブ(アジョビ)はCGRPそのものに、エレヌマブ(アイモビーグ)はCGRPの受け皿に結びつきます。

薬(一般名)打ち方
エムガルティ(ガルカネズマブ)30日ごとに1本の皮下注射。初回だけ2本打つ
アジョビ(フレマネズマブ)4週(28日)ごとに1本の皮下注射。3本をまとめて打てば12週ごと
アイモビーグ(エレヌマブ)4週(28日)ごとに1本の皮下注射
ビエプチ(エプチネズマブ)12週(3か月)ごとに約30分の点滴(発売はこれから)

皮下注射の3つの薬は、医療機関で打つほか、使い方の説明を受けたうえで自宅で自分で打つこともできます。注射した場所の赤み・かゆみ・痛みが主な副作用で、エレヌマブでは便秘が出ることがあります。

エプチネズマブ(ビエプチ)は12週(3か月)ごとに点滴で使う抗体薬で、2026年9月16日に日本で承認されました。通常は100mgで、効果が足りない場合は300mgを使います。薬価が決まって発売されるのはこれからで、値段はまだ決まっていません(2026年10月時点)。

抗体薬は、厚生労働省の最適使用推進ガイドラインで使える人の条件が決められています。主な条件は、国際頭痛分類の基準で片頭痛と診断されていること、使い始める前の3か月以上にわたって片頭痛の日が月に平均4日以上あること、生活の見直しや発作のときの薬をすでに試していること、そして従来の予防薬(プロプラノロール、バルプロ酸、ロメリジンなど)を少なくとも1つ使って、効果が足りなかった、副作用で続けられなかった、または持病などで使えなかったことです。使い始めて3か月を目安に効果を確かめ、よくならなければ中止を考えることも、このガイドラインに書かれています。

ゲパント(飲み薬)

ゲパントは、CGRPの受け皿をふさぐ飲み薬です。アトゲパント(アクイプタ)は日本では予防薬としてのみ承認されていて、通常は60mgを毎日1回飲みます(10mgの錠剤もありますが、これは一緒に飲む薬の関係などで量を減らす場合に使うものです)。リメゲパント(ナルティーク)は予防薬と発作のときの薬の両方で承認されていて、予防に使うときは75mgを1日おきに1回飲みます。注射が苦手な人の選択肢になります。吐き気や便秘などが出ることがあります。

どの薬が合うかは、頭痛の日数、ほかの病気、妊娠の予定、通院のしやすさ、費用などで変わります。「新しい薬ほどよい」とは限らず、従来の飲み薬でよく効く人もいます。

予防薬の費用はどのくらい?

従来の飲み薬は3割負担で月数百円〜千円ほどですが、CGRPに働く薬(抗体薬とゲパント)は、3割負担でも薬代だけで月に1万2千〜1万3千円ほどかかります。CGRPに働く薬どうしでは、注射でも飲み薬でもほぼ同じ水準です。

薬使い方薬代の目安(3割負担)
エムガルティ(ガルカネズマブ)1本を30日ごと(初回は2本)1本 約12,700円(初回は約25,400円)
アジョビ(フレマネズマブ)1本を4週ごと、または3本を12週ごと1本 約11,700円(3本まとめると約35,000円)
アイモビーグ(エレヌマブ)1本を4週ごと1本 約11,700円
ナルティーク(リメゲパント)予防は1日おき(月15錠)月 約13,200円
アクイプタ(アトゲパント)通常60mgを毎日月 約13,150円
ビエプチ(エプチネズマブ)12週ごとの点滴発売前のため未定

保険の値段(薬価)は、エムガルティ1本約42,400円、アジョビ1本約39,000円、アイモビーグ1本約38,800円、ナルティーク1錠2,923.20円、アクイプタ60mg 1錠1,461.60円です。いずれも2026年10月時点の薬代だけの目安で、診察料や注射の手技料、薬局の調剤料などは別にかかります。薬価は改定で変わります。

医療費の自己負担が1か月の上限額を超えた場合は、高額療養費制度で超えた分が戻ります。勤め先の健康保険組合によっては、付加給付でさらに自己負担が抑えられることがあります。1年間の医療費が多かったときは、確定申告で医療費控除を受けられる場合があります。費用が心配な人は、始める前に主治医や医療機関の窓口で確認してください。

予防薬は、効いているかをどう確かめる?

予防薬を始める前と比べて、頭痛のある日が半分以下に減ったかどうかが、効果を見るときの一つの目安です。従来の飲み薬は2〜3か月、CGRP関連の薬は3か月続けたところで判定します。抗体薬は、最適使用推進ガイドラインでも3か月を目安に効果を確かめることになっています。

すべての人に同じように効くわけではありません。たとえば抗体薬の臨床試験の一つでは、半年で頭痛日数が半分以下になった人は、薬を使った人の約6割、偽薬の人の約4割でした(Stauffer 2018)。半分まで減らなくても、痛みが軽くなった、続く時間が短くなった、発作の薬を飲む日が減った、寝込む日が減った、という変化も大事な効果です。逆に効果が足りなければ、別の種類の予防薬に替えると効くことがあります。

医師がどんな数字を見て、続けるか替えるかを判断しているかは、医療者向けのCGRP関連薬の効果判定に、生活への支障を点数にする問診票については頭痛の評価尺度にまとめています。

予防薬は、いつまで続ける?やめ時は?

効果が出て頭痛の少ない状態がしばらく安定したら、量を減らしたり、いったんやめたりすることを主治医と相談します。やめたあとに頭痛が再び増える人もいますが、その場合は再開すれば多くの人で効果が戻ります。

CGRP関連の薬では、効いたあともある程度長く続けてからやめたほうが、やめたあとに再び増えにくい可能性を示した研究もあります(Barbanti 2025)。いつやめるかは、効果の安定ぐあい、本人の希望、妊娠の予定、保険上の条件などで変わるので、自己判断でやめずに主治医と決めてください。

予防治療で、記録が大事な理由

予防薬が効いたかどうかは、始める前の頭痛日数と比べて初めて分かります。「前より楽な気がする」だけでは判断が難しく、始める前の1〜3か月の記録があると、続けるか、替えるか、やめるかを主治医と数字で話し合えます。記録するのは、頭痛のあった日、発作の薬を飲んだ日、寝込んだり休んだりした日の3つで十分です。書き方は頭痛ダイアリーの書き方で説明しています。

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頭痛の日数と発作の薬を飲んだ日数が月ごとに自動で集計されます。予防薬を始めた日を登録すると前後の変化が見え、主治医にそのまま共有できます。

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妊娠を考えている人、子ども、持病のある人

予防薬には、妊娠中に使えない薬(バルプロ酸は妊婦に禁忌)や、妊娠中・授乳中に使ってよいかを判断するデータが十分でない薬(CGRP関連の薬など)があります。妊娠を考えている人は、予防治療を始める前、または考え始めた時点で主治医に伝えてください。子どもや10代、心臓・血管・肝臓・腎臓の病気がある人も、選べる薬が変わります。

この記事は、片頭痛の予防治療についての一般的な説明です。特定の薬をすすめるものではありません。予防治療を始めるか、どの薬を使うか、いつやめるかは、必ず主治医に相談して決めてください。承認状況は2026年10月時点のものです。

参考にした資料

  • 日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会(監修). 頭痛の診療ガイドライン2021. 医学書院; 2021.
  • Stauffer VL, et al. Evaluation of galcanezumab for the prevention of episodic migraine: the EVOLVE-1 randomized clinical trial. JAMA Neurol. 2018;75:1080-1088.
  • Barbanti P, et al. Long-term treatment with anti-CGRP monoclonal antibodies: the I-GRAINE study. J Neurol. 2025.
  • 厚生労働省. 最適使用推進ガイドライン(ガルカネズマブ、フレマネズマブ、エレヌマブ).
  • 厚生労働省. 薬価基準収載品目リスト(2026年10月時点).
  • 各薬の添付文書(医薬品医療機器総合機構 PMDA 医療用医薬品情報検索)

よくある質問

片頭痛の予防治療は、頭痛が月に何日あったら考えますか?

頭痛の診療ガイドライン2021では、片頭痛の発作が月に2回以上、または生活に支障をきたす頭痛が月に3日以上ある人は、予防治療を検討することが勧められています。発作の薬が効かない・使えない、薬を飲む日が増えている、1回の発作で寝込むなど生活への支障が大きい、という場合もきっかけになります。始めるかどうかは主治医と相談して決めます。

片頭痛の予防薬にはどんな種類がありますか?

昔から使われている飲み薬(ロメリジン、バルプロ酸、プロプラノロール、アミトリプチリンなど)、CGRP関連抗体薬(皮下注射のガルカネズマブ、フレマネズマブ、エレヌマブ、点滴のエプチネズマブ)、ゲパントの飲み薬(アトゲパント、リメゲパント)の3つのグループがあります。エプチネズマブ(ビエプチ)は2026年9月16日に承認され、薬価収載と発売はこれからです(2026年10月時点)。バルプロ酸は妊婦には禁忌なので、妊娠の可能性がある人は主治医と必ず相談してください。

CGRPの注射はどのくらいの間隔で打ちますか?

エムガルティ(ガルカネズマブ)は30日ごとに1本(初回のみ2本)、アジョビ(フレマネズマブ)とアイモビーグ(エレヌマブ)は4週(28日)ごとに1本の皮下注射です。アジョビは3本をまとめて打てば12週ごとにできます。ビエプチ(エプチネズマブ)は12週ごとの点滴です。皮下注射の3つの薬は、従来の予防薬を少なくとも1つ試して効果が足りなかったなど、最適使用推進ガイドラインの条件に当てはまる人が対象です。

CGRP関連の予防薬の費用はどのくらいですか?

3割負担・薬代のみの目安(2026年10月時点の薬価)で、エムガルティは1本約12,700円を30日ごと(初回は2本で約25,400円)、アジョビは1本約11,700円を4週ごと(3本まとめて12週ごとなら約35,000円)、アイモビーグは1本約11,700円を4週ごと、ナルティークの予防は1日おきで月約13,200円、アクイプタは通常60mgを毎日で月約13,150円です。診察料などは別で、薬価改定で変わります。従来の飲み薬は月数百円〜千円ほどです。高額療養費制度や健康保険組合の付加給付、医療費控除の対象になることもあります。

予防薬はどのくらいで効果が分かりますか?

従来の飲み薬は2〜3か月、CGRP関連の薬は3か月続けたところで効果を判定します。始める前と比べて頭痛のある日が半分以下に減ったかが一つの目安ですが、痛みが軽くなった、発作の薬を飲む日が減った、という変化も大事な効果です。

予防薬はずっと飲み続けなければいけませんか?

効果が出て頭痛の少ない状態がしばらく安定したら、量を減らしたり、いったんやめたりすることを主治医と相談します。やめたあとに頭痛が再び増える人もいますが、再開すれば多くの人で効果が戻ります。自己判断でやめずに、主治医と時期を決めてください。

予防薬を使っていても、発作のときの薬は飲んでいいですか?

はい。予防薬を使っていても発作がゼロになるとは限らないので、発作のときの薬は引き続き使います。予防薬が効くと、発作の薬を飲む日も減っていきます。リメゲパント(ナルティーク)を予防に使っている場合の発作時の薬の選び方は、主治医に確認してください。

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執筆・監修者

前川 裕貴 - 頭痛専門医・ズツノート開発者
前川 裕貴

脳神経内科専門医・頭痛専門医

頭痛日誌アプリ「ズツノート」開発者

日本頭痛学会 専門医日本神経学会 専門医日本内科学会 内科専門医難病指定医

脳神経内科専門医・頭痛専門医。東京大学 脳神経内科で診療・研究に従事したのち、頭痛診療に専念。頭痛診療に欠かせない頭痛日誌が、いまだに紙での運用が多く、市販のアプリも使いにくいものばかりであることに課題を感じ、自ら頭痛日誌アプリ『ズツノート』を開発した。エンジニアとしても活動する“つくる頭痛専門医”として、診療と開発の両面から頭痛医療に取り組んでいる。

2020–2023東京大学 脳神経内科
2023–昭和医科大学 客員講師 / 埼玉精神神経センター 頭痛専門外来 / 荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長
2025–株式会社 Iris Wellness 代表(頭痛日誌アプリ「ズツノート」を開発・運営)

現在の所属:埼玉精神神経センター 頭痛専門外来 / 荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長

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